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房一はそれに目をとめていたが、急に強い口調で、
が、房一をよく知つている者にとつてはその低い居場所がよけい注意をひくらしかつた。千光寺の住職は何気なく一座を見廻しているうち、思ひがけない所に房一を見つけ、ちよつと顔色を動かせた。それから、時折房一の視線を捕へて会釈ゑしやくしようとしたが、遠くて駄目だつた。庄谷は逸早く房一の席に気がついたらしい、が、その殆ど白味ばかりのやうな細い眼にちらりと微笑を浮べたきりだつた。
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
と、房一は帽子を手にやつた。
「うん?」
「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」
と気のない返事をした。
「ふうむ。いや、よからう」
「今日はえらい早いお帰りだね」
彼は自信を失つた。それにこの苦痛と動揺は明らさまに説明しにくい、説明したところで判つてもらへない種類のことだつた。房一はそれを盛子の妊娠の揚合にも経験した。
「おや、いつのまにそこに来てなさつたかね。お茶ですか、上げますとも」
「もう河原町へは当分帰る気はないんですかね。貴方にお貸したところをみると」
相手が急に三人にふえたためか、柵の中の長身な男は一層興奮した。